ちょっと一服(1)私の行きつけの書店

 昔から本屋巡りは私の最大の楽しみだった。学生時代を送った新潟市内の本屋は(古書店も含め)日課のように毎日通ったものである。記憶にある限りでは、<北光社>や<万松堂>という大書店から<考古堂書店>、<文信堂>という味のある書店まで歩き回ったものである。古書店では<西村書店>などがありこれもよく利用した。古書店では私の蔵書を頻繁に酒代に変えてもらった恩義がある。
 今では<ジュンク堂書店>や<紀伊国屋書店>などの大書店が進出しているようである。

 現在は、新所沢のパルコにある<LIBRO>が最も頻繁に訪れる書店である。他には、久米川駅前の<丸山書房>、東村山駅前の<あゆみブックス東村山店>、新宿と国分寺の<紀伊国屋書店>、高田馬場の<芳林堂書店>、池袋の<ジュンク堂書店>を主に利用する。<LIBRO>と最初に挙げた二つの地元の小書店は距離も近く、品揃えの癖を飲み込んでおけばそれなりに使い勝手はいい。国分寺の<紀伊国屋書店>はやや品揃えが不十分であり、<芳林堂書店>は比較的バランスが取れている。新宿<紀伊国屋>や<ジュンク堂書店>は何も言うことのない立派な書店であるが、私は<ジュンク堂書店>の方が書籍販売に関するコンセプトがはっきりしているような感じがして、どちらかと言えば後者に軍配を挙げたくなる。

 しかし、最も購入額の多い書店は<Amazon>であり、また同じweb上の古書店である<スーパー源氏>なども頻繁に利用している。
 古書については、Amazonマーケットプレイスの出品者が個人の場合商品の値付けにバラツキがあり、価格自体もやや高めであるのに比べて、スーパー源氏の価格は古書市場での淘汰を受けて販売されているため、極めてリーズナブルであると思う。例えば、河出書房新社「ゲオルグビューヒナー全集」の1970年の旧版もここで見つけて安く買い求めることができた。しかしweb書店は、手に入りにくい書物も容易に買うことが出来、配送も迅速で大変便利ではあるが、本屋巡りという何にも代えがたい喜びがない。

 あまり一般的でない書物をどうしても書店で手にとってみたい時は池袋の<ジュンク堂書店>へ行くことになる。ここには殆どあらゆるジャンルの書物が完備されており、見事なほど整然と書棚に並んでいる。例えば、一般書店で大月書店刊の岡崎次郎訳の「資本論」全9巻が揃っているのもこの書店以外にはあまりないだろう。

 今まで中毒患者のように書物を買い続けてきたが、本をいくら読んでも利口になる事はないということが分かった。知識は得られるが智慧が得られるわけではない。むしろその時々に読む著者の頭で世の中を見る危険性がある。まあ、その方が楽なのではあるが・・・。
 本当は、本など読まずに世を送れたら嬉しいのだが。実にらくちんで、しかしやや退屈な人生を送れるかも知れない。そしたら、不自然に頭でっかちとなってしまった人間を蝕む精神の病弊とは無縁になれるのかも。