2013-04-01から1ヶ月間の記事一覧

叙述ミステリを読む(2)−「十角館の殺人」

綾辻行人の「十角館の殺人」。アマゾンのカスタマー・レビューで多くの人々が絶賛していることもあって、あまり辛口の批評めいたことを言うのは野暮なのかも知れない。人々に何がしか楽しみを提供することはエンターテインメントの大切な役目で、それはそれ…

叙述ミステリを読む−「模倣の殺意」「殺戮にいたる病」「ロートレック荘」

本屋で平積みされていた中町信の「模倣の殺意」を手にとって、何となく購入し、帰宅して早速読み始め、一気に読了した。 解説で濱中利信は、この作品の発行年である1972年という日付に着目し、「本書はこのパターンの叙述トリックを用いた初の国内ミステリ」…

「『 余命3カ月』のウソ」近藤 誠(ベスト新書、'13.4.20)−医療は人を恫喝することで成り立つ (付記)精神科医療について

私は10年以上を病院に勤務し、日々医師や患者さんなどと接している立場の人間である。ただ私は、医師でもその他の医療従事者でもなく、単なる事務職であるが、それなりに責任を負う立場にいるので、役所、業界団体、医師、製薬会社などへの接触も日頃極めて…

知性の限界」高橋昌一郎著(講談社現代新書、'10.4.20)その(2)−帰納法の否定の元祖はデイヴィッド・ヒュームだ

第2章「予測の限界」のメインテーマは、科学哲学者カール・R・ポパーの<帰納法の否定>と<反証主義>となるのだろう。 カール・R・ポパーは主著である『科学的発展の論理』(恒星社厚生閣、'71.7.25)において、冒頭から帰納の問題を取り上げ、経験科学の…