2013-09-01から1ヶ月間の記事一覧

「おれの血は他人の血」筒井康隆著(河出書房新社、S.54.7.20、15版)は日本版「赤い収穫」か?

『おれの血は他人の血』は、昔々、筒井康隆に凝って、作品を次々読み漁っていたころ買い求めたもの。久しぶりに読み返してみる。 一体この作品を何と言えばいいのだろう。かねてより、ハメットの『赤い収穫』やそれを下敷きにした黒澤明『用心棒』(あるいは…

「国の死に方」片山杜秀著(新潮新書、'12.12.20)―ゴジラで考える

そろそろ日本という国の死に方を考える時期にきたのか。 本書は、2011年3月11日の東日本大震災のエピソードから始まっている。 その時私は、職場である病院の1階の事務室にいて激しい揺れに遭遇し、思わず傍の壁に手をついて身体を支えた。その日の15時頃、…

「僕は君たちに武器を配りたい」瀧本哲史著(講談社、'11.9.21)―コモディティにならないために

著者が本書で対象としているのは、新卒で社会に出ようとしている学生、あるいは社会へ旅立ったばかりの若者であり、彼らに困難な現在の日本社会で生き抜くための「武器」を配ろうとする。これが本書を貫く明確なコンセプトだ。 遥か昔、何百光年か前に若者だ…

「鎮魂 さらば、愛しの山口組」盛力健児著(宝島社、'13.9.13)―山口組の変質も時代の流れに沿う

山口組若頭宅見勝暗殺事件については、今まで木村勝美の『山口組若頭暗殺事件』(イースト・プレス、'02.3.9)でおおよその真相をを把握していたつもりだったが、本書を読み、事件の深層に別の様相が現れるのが見えて興味深かった。 事件の底流にあるのは、…