「一生お金に困らない個人投資家という生き方」吉川英一著(ダイヤモンド社、'12.1.26)―意外と地に足のついた本

書店で何気なく買ってしまったが、今更個人投資家になろうと考えた訳でもない。以前、株を少し手がけていたことがあるが、今の時代の投資環境はどうなっているのか、また投資家、特にデイトレーダーはどういうことを考えているのかに興味があった。

 中身は、デイトレと不動産の収益物件への投資の薦めが半々である。しかし、この書のタイトル(恐らく出版社の編集の方針が反映したものだろう)のようにトリッキーなもの、デイトレと不動産投資でハッピーという趣旨が語られるのではなく、これらの投資にまつわるリスクがきちんと書いてある。特にデイトレーダーの90%が利益を出していないということも著者は冷静に指摘している。著者自身、デイトレでそう大きな利益がでていないことも、著者の<デイトレ収支表>を見れば明らかである。
 投資の本にしては、よく見かける「・・・で1億円儲ける」とか「・・・で1億円稼ぐ」などという首を傾げるタイトルの本に比べよりましで、地に足がついている感じがする。
 デイトレに関するウェブサイトの様々な情報もきちんと提供されている。

 デイトレの薦めと思って本書を読んで、却って二の足を踏む読者もいるかもしれない。著者は読者が安易にデイトレに挑戦すること、つまり人が陥りやすい欲の皮の突っ張った射倖心に警鐘を鳴らすつもりで本書を書いたのだろうか。
 別の見方をすれば、本書は自由な生き方の薦めで、それを実現するための著者の経験に基づく一つの選択肢を提示したものだ。サラリーマンという社会のくびきに捉えられている人々へ福音を伝えようとしている意気込みは理解できる。そういう意味ではある種の好感を持って読み終えた。