「頼れない国でどう生きようか」加藤嘉一、古市憲寿著(PHP新書、'12.11.1)−絶句!頼れない国で生きる頼れない若者たち

戦後68年も経つとこのような若者が輩出されてくるのかと、思わず嘆息してしまう。
 要するに彼らが語るのは、国際化した現代社会における自己保身の方法論に尽きる。ここにあるのは、それと自覚しないままに垂れ流す自慢話と、彼らのどうでもいい私生活である、”読者諸君、どうだ恐れ入ったか”とばかりに。この未熟な若者たちのやくたいもない話をまともに取り合う気にはなれない。
 彼らの語る日本人、中国人、経済、政治、社会などに関する各ネタは、週刊誌やイエローペーパーに書き古されているのと同程度以下、それをさも大層な指摘であるかのように尤もらしく語る、そのあまりの皮相さに目を疑ってしまう。例えば169ページに書かれている日本の産業空洞化の議論などは何年も前から語り尽くされているもので、新しい視点は何もなく、何を今さらという感じで、すこぶるいただけない。
 社会保障費に対する見方も、どこかで刷り込まれた伝聞の情報を得々として喋っている。
「そもそも全貌なんてないんですよ、中国には」と言う議論でも、その根拠となる論旨を追って行っても、きちんと論理的・実証的に突きつめられておらず、曖昧に話が拡散し、尻切れトンボに終わってしまっている。こうした傾向はこの本の随所に見られる。
 まあ一時が万事で、これ以上例を挙げるのもムダというもの。まあ、八つぁん熊さんの居酒屋談義だと思えば腹も立たないが、読んだだけ時間の無駄であった。

 同じようなコンセプトで大前研一柳井正が著した『この国を出よ』(小学館)とは比ぶべくもない。