増補版「僕の年商が、5万円から3000万円になった本当の理由」は行政書士の業務の新分野開拓にチャレンジした具体例が語られている

著者は、行政書士の浅川馨一朗氏で、増補版は11年3月にTACから出版されている。
 私が書店でこの本を手に取った本当の理由は、私が勤務の傍ら行政書士事務所を登録している人間だからである。
 普段は病院に勤務をしているが、その余暇に主に知人からの依頼で、法人設立や相続・遺言(遺言執行者も受任)、成年保佐人への就任、離婚相談、会社の財務諸表の作成などの業務を細々と行っている。

 今まで著名な行政書士の成功本を多く読んだ。丸山学氏、金森重樹氏、澤田尚美氏、佐野誠氏などの著書である。特に、行政書士業務における営業(広告も含む)の重要性を認識させてくれたのは金森氏の著書「行政書士開業初月から100万円稼いだ超・営業法」であった。それぞれの著書から教えられることが多かったが、浅川氏のこの本はまた一味違う。
 一つは、インターネット活用よりも、アナログ的な人間関係の構築を事務所経営の根本に据えていること、次に、行政書士の業務の在り方として、法務実務以上に(著者の言葉で言えば)”サービス業という観点”を重視していることである。そして、創意工夫と既成概念にとらわれない柔軟な発想、現実の世の中にあるわずかな歪みから商機を見出す鋭い観察眼には感心した。

 この本は、単に行政書士の成功本ではなく、商売すべてに通じるマーケティング方法論と言ってもいい。著者は失敗を乗り越えつつ自ら開拓してきた業務のノウハウを、かなり細部に渡って赤裸々に紹介している点も好感が持てるし、また私自身の業務の取り組み方を再検討するのに大いに参考になった。こうした本にありがちな自慢臭も感じられない。
 ただ、本書で紹介されている戸籍・住民票の取り寄せ代行サービスは、相続案件に絡まないゆえに職務上請求の本来の在り方と少し違うように思えるので、慎重に考えた方がいい。悪質な例ではあるが、かつて不動産業者に職務上請求書を1枚1万円で売って、摘発された行政書士もいたことでもあるし。
 文章は大変読みやすく、2〜3時間ほどで読了出来た。