「認知症を恐れない」サンデー毎日 8.7増大号

政局や原発の記事ばかり氾濫している週刊誌で、珍しく真面目で国民全員が関心を持つべき重要な記事が「サンデー毎日8.7増大号」に掲載された。記事のタイトルは<世界一長寿の宿命「認知症を恐れない」>

 簡単に要約すると、日本における”アルツハイマー認知症の治療薬”は従来「ドネペジル」(商品名:アリセプト)の一剤しかなかったのだが、本年になって海外の標準治療薬である3種類が日本でもようやく承認され、次々と発売された、ということである。

 先ず、「ガランタミン」(商品名:レミニール)がヤンセンファーマ武田薬品から3月に発売された。この薬は、ドネペジルと同じ、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用を持つが、他に、ドネペジルにはない”ニコチニックAPL作用”を持つ。詳しくは、ヤンセンファーマプレスリリースを参照されたい。

 次に、「メマンチン」(商品名:メマリー)が6月に第一三共から発売された。この薬はアセチルコリンエステラーゼ阻害作用とは全く異なって、脳内の主要な興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸に対して拮抗作用があり、グルタミン酸の過剰を抑える。大手薬品問屋の説明では、「ドネペジル」と併用することで、相乗的に効果を高めるとのこと。(勿論、これはあくまで参考意見に過ぎない。実際の服用に当たっては医師の指示に従うことは当然のことである。)これは、第一三共の、ニュースリリースを参照。

 三つ目は、貼付薬の「リバスチグミン」(商品名:イクセロンパッチ、リバスタッチパッチ)が7月になってノバルティスファーマ(前者名)と小野薬品(後者名)から発売された。基本的には「ドネペジル」と同じアセチルコリンエステラーゼ阻害作用を持つが、唯一の貼り薬である。これも、ノバルティスファーマプレスリリースを参照されたい。

 上記に関連した報道はweb上では年初より花盛り状態だったが、今回は新聞社の発行する有力な週刊誌に報じられたことに意義がある。従来は「ドネペジル」一剤しかなく、副作用が見られたり、効き目がなくなってきても他に選択肢が全くなかったことを考えると大きな進歩と言える。ただし薬価は「ドネペジル」とほぼ同じで、用法用量を見ると、開始時はそれぞれ薬価は異なるものの、みな逐次増量していくという用法で、最終の1日1回の維持量での価格は427.5円と均一となっている。従って患者の負担面でのメリットはない。

 これらの薬の添付文書(注意書き)はすべてweb上見ることができる。
 この「サンデー毎日」の同じ記事の中に、2007年から始まったアルツハイマー病の兆候を発症前あるいは早期に発見するための(ジェイ・アドニ)という大規模臨床研究についての解説がある。記事の内容は正確で信頼するに足るものであると思う。